Fly High!! ~ 彼らのStory ~

バレーボール男子応援ブログ

■夢をこの手につかむまで その4

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運命のイラン戦。

この試合でほとんどこのOQTの行方が決まると思っていた。
だから現地で見たかった。

コートサイドの端っこの方で静かに見守った。

イランは強かった。
いや、日本が弱かったのかもしれない。

ギリギリまで追いつめたように見えて、大事なポイントが取りきれない場面が続く。
昨日と同じでセットの後半で粘り切れない。
その上、柳田くんの怪我。
サーブで何度も日本を救った男。
そのメンタルの強さに何度も驚愕した。

ギリギリの場面で、あのサーブを打てることがポテンシャルそのものだと私は思っている。
確かに足らないものはたくさんあるかもしれないけれど、これができる彼に期待がかかるのも仕方のないことだな、と私は素直に思っていた。

連戦で、しかも勝てないからモチベーションを強く保つのが厳しくなる。
毎日そんな戦いをしている彼らを尊敬こそすれ、叩く気にはなれなかった。

初めから分かっていたじゃない?
女子よりははるかに厳しい戦いになること。
オリンピックにいける可能性が高くはないこと。

でも、ワールドカップであの活躍を見せてくれたチームだから、きっともう一度、夢を見させてくれるとどこかで勝手に思い込んでいた。
彼らは必死でリオの切符を取りに行こうとしていたと私には見えた。

気迫が足りないとか、ボールへの執着心がなかったというような人もいたけれど、そうは見えなかった。
満身創痍になりながら、砂のように手のひらからこぼれ落ちていくリオへの可能性を救いあげようと必死だったようにしか見えなかった。


思いが強ければ勝てるなんていうのは妄想。
それを羽生結弦は「スポーツは残酷だ」と言っていた。
努力や思いが報われる時ばかりじゃない。

いろんなスポーツを見て、応援していれば分かること。
ラッキーなチャンスはやってくるかもしれないけど、それをとりきれるか、は今まで積み上げてきたものがすべて。

そう、練習でできたことが8割できたらいい。
練習でできないことは本番では奇跡でも起こらない限りできない。
勝つために必要だったものが何かなかった。
それ以外に敗因はない。

それが何だったのかを分析するのは専門家に私は任せる。
でも、このチームではリオには行けないを痛感するゲームだった。

決めるべき時に、決めるべき1点を取れない。
いいところまで行くのに、という印象はこの試合でも変わらなかった。

柳田くんは怪我をしても、ピンチサーバーで出てきていた。
彼のサーブにはそれだけの威力がある。

大丈夫なはずがない。
テーピングして、痛み止めを飲んで、それでもそのコートに立ちたいという気持ちは分かる。

自分ができることがもっとあったんじゃないか?と思いながら戦いを終えることはとても苦しいことだと思うから。
やると決めた時は怪我をしていようが、それが自分の後の人生に影響を与えることになると分かっていても、引いたりはしない。

そういうときの勢いは助言では止まらない。
「指示」とか、「命令」とか、そういう種類の言葉でしか止めることができないもの。
若い男の子にはその傾向が強い。
そういう負けん気がアスリートとして彼らをその場に連れてきたんだろうけれど。

でも、見てる方は苦しかったよ。

これ以上、怪我が悪くならなければいいのに、と思ったよ。
勝ってほしいという気持ちと同じくらい、これ以上、頑張らなくていいよ、という気持ちも湧き上がっていた。

イラン戦を落とし、もう、後がなくなった龍神日本。
私の帰りの足取りは重かった。


つづく。